4〜6歳児の絵本

 
[ちっちゃなほわほわかぞく]
作:マーガレット・ワイズ ブラウン
絵:ガース・ウィリアムズ 訳:谷川 俊太郎
この絵本は私にとってベスト3の中の一冊です。「ほわほわ かぞく」という響きがすでに可愛いです。クマでもない不思議な動物の家族の一日のお話で、絵に温かみがあって可愛く、そして深みもあります。静かな平凡なストーリーの中で、ほわほわのおとうさんとおかあさんの子どもへの愛情がダイレクトに伝わってきます。「子どもはこんなにも愛されているんだよ」ということが、うちの子にも伝わったのではないかなと思います。文章もやさしい響きで、それでいてとてもリズミカル。小さな生き物や家族への愛情が描かれた、愛おしい気持ちがあふれてくる絵本です。
[からすのパンやさん]
作:かこ さとし
からすの街にある、からすのパン屋さんのお話です。ひょんなことからいろんな種類のパンをつくることになったパン屋さん。その数が圧巻です。そのパンが欲しくて、街中のからすがお店にやってきたので大変なことに。その騒ぎを火事だと勘違いしたからすが消防署に連絡して消防車が出動したり、大事件だと勘違いして機動隊が出動したりと、てんやわんやの大騒ぎです。でも、パンの売り出し時間にはみんなきちんと並んでパンを買っていき、騒ぎは収まりました。やがてパン屋さんは、評判のいい立派なお店になったという楽しいお話です。絵本の中のからすたちの描写がとてもおもしろく、たくさん描かれたパンはどれもおいしそうです。1973年に出版されてから50年以上も読み継がれている絵本です。
[おちゃのじかんにきたとら]
作:ジュディス・カー 訳:晴海 耕平
ソフィーとお母さんがお茶の時間にしようとすると、突然玄関のベルが鳴ります。誰かと思って見てみると、お腹をすかせたトラでした。どうするのかなと思っていたら「もちろんいいですよ。どうぞ おはいりください」と招き入れます。「なんでやねーん!」と思ってしまいますが、そこは絵本の世界。その後、トラは家中のありとあらゆるものを食べて「さよなら〜」と帰ってしまいます。そこにお父さんが帰宅し、食べる物がなくなってしまったからレストランへ行こうとなり、家族で幸せな食事の時間を過ごします。一見おおらかな物語ですが、作者は1923年ベルリン生まれ。10歳のときにナチスの迫害を逃れるために家族とドイツを離れ、スイス、フランス、イギリスへと渡ったそうです。トラとして描かれたものは実はナチスだったと読みとると深いものが見えてきます。
[サンタクロースと小人たち]
作:マウリ・クンナス 訳:いながき みはる
クリスマスの季節が近づくころから読んであげたい一冊です。フィンランドの山のふもとにあるサンタクロースの村が舞台。その村ではサンタクロースが何百人もの小人やトナカイに囲まれて暮らしています。小人の仕事は、世界中の良い子へのプレゼントを用意すること。だから、とても器用でいろんな職業の人がいるんですって。その描写がとても細かくて、本当にこんな村が実在するんじゃないかと思うくらいです。みんな大忙しですが、クリスマスイブにサンタさんが子どもたちにプレゼントを届けるという大切な仕事を終えたクリスマスの夜には、みんなで盛大なお祝いが開かれます。私の子どもは結構大きくなるまでサンタさんを信じていました。子どもに夢を与えてくれるステキな絵本です。
[てぶくろ]
作:エウゲーニー・M・ラチョフ
訳:うちだ りさこ
ウクライナの民話の絵本で、柔らかくて温かみのある描写が印象的。あるとき、雪のうえに落ちていた手袋にネズミが住みこみました。そこへカエルやウサギ、キツネが次々やってきて、とうとう手袋ははじけそう…。小さな手袋に、どうしてそんなにたくさんの動物が入れるのかは不思議ですが、動物が次々と声をかけるところでは声色を変えて読んでみました。シンプルな物語ですが絵がとてもステキ。動物たちが着ている服も鮮やかでオシャレです。動物が増えるごとに手袋の様子に変化が見られ、わくわくドキドキしながら読める本です。1965年に発行された古い絵本ですが、長年読み継がれている魅力がたっぷり詰まっています。
[だるまちゃんとてんぐちゃん]
作:かこ さとし
てんぐちゃんの持っているものを、何でも欲しがるだるまちゃん。子どもにはよくあることですよね。毎度新しいものを欲しがるだるまちゃんに、だるまちゃんのお父さんが何かと協力するのですが、ちょっと空回り気味。でも、そこがまたおもしろいのです。てんぐちゃんの長い鼻を欲しがるだるまちゃんに、お父さんがしてあげたことは…! かこさとしさんの作品には家族の愛情や素直な子どもの姿が描かれているので心が温まります。細かな絵がたくさん描かれているので、じっくり見るのもおすすめです。
【かこ さとしさんの紹介】
1926年福井県武生市(現・越前市)生まれ。東京大学工学部卒業。会社退社後は、児童文化と児童問題の研究のかたわら、テレビのニュースキャスター、大学講師、海外での教育実践活動などに従事しました。作品は物語絵本、科学・天体・社会関係の知識絵本、童話、紙芝居など多岐にわたり、なんとその数は500点以上にもなります。2013年、生まれ故郷である福井県越前市に「かこさとしふるさと絵本館 砳(らく)」という子どもから大人まで楽しめる絵本館がオープンしました。
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